自賠責保険の重要性
姉と弟、絶対に相容れない存在…そう、任意保険と自賠責保険のようなものだ。
「お、落ち着いて姉ちゃん…自賠責の何がいけないんだよ〜…」
泣き声で後ろにずれていく弟、紙とペンだけは持っているな、よし。
「落ち着いてるわよ、ええ口から煙が出るほど落ち着いてるわよ。今から言うことよ〜く聞きなさい?車や原付に乗る人はね、必ず自賠責保険っていうものに入らなきゃいけないの。いわば強制保険なの!」
「え、自由じゃないの?」
「当たり前でしょこの…ううん、まあいいわ。自賠責はね、被害者の救済第一なのよ?だから対人賠償のみ、お金が出るの。簡単に言えばあんたが車で人ひいたり、ぶつけた相手側の運転手、同乗者、それから歩いてる人とかが怪我したり死んだりしたらね!」
「ま、まだ死なせてな…」
「シャラーップ!お黙り!事故はいつ何時起きるかわからないから保険があるのよ!」
私は弟の前に仁王立ちになると、炎が出んばかりの勢いでまくし立てた。
「いーい?被害者はいいわよ?でもけがや死亡のみ、よ?ぶつけたあんたの怪我や自動車の破損を治すには一銭も出ないってことよ!例えばあんたみたいなチャラ男、今はそんな大金払えないでしょ?でもね、偶然事故にあった被害者には賠償金をもらえなくて泣き寝入り、…なぁんてことがないように自賠責はあるの、もちろん上限額はあるけどね。」
まるで事故でも起したようにぶるぶる震えながらしばらく考えた弟が、はっと気がついたように口にしたのは…
「あっ、じゃあ車屋のお姉さんは俺の事だまして自賠責保険にはいらせようと…」
「おばかああああ!自賠責保険は強制加入!車屋のお姉さんに謝りなさい!」
ひいい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいとエンドレスで繰り返す弟、いつの間にか両親も私から距離をとっている、いいわよ勝手になさい…
「…だから、自賠責、そして自賠責が賄えない部分を補うのが今あなたが調べた任意保険の会社なのよ…」
ポツンと映った画面を、しばらくじっと見つめる姉と弟…
「悲劇が起きた時、あんたは責任、とれるの?」